□ファーストキスは
「おまえ、死ぬのか」
答えはなかった。まあ、死ぬのだろうと思う。彼も、そして自分も。
青く染めたスナイパーの衣装が、流した血で赤く濡れていた。きっと自分も同じような有様なのだろう。爪に引き裂かれた胸が、ひどく熱い。
弓弦が切れたのは随分前のことだ。横薙いだ爪を逃せなかった。狩った獲物の皮や肉を削ぎ分けるために下げていた大ぶりの短刀で戦いを続けた。
自分の短刀は相手の喉を貫き、相手の爪は自分の胸を裂いた。喋られないのをわかって、訊いた。
強かった。笑いすらした。──たのしかった。
未だ人型を解かないまでも幾分大柄な相手に馬乗りになったまま、リラは顔を寄せた。
「おまえ、死ぬんだな」
答えはなかった。死ぬのだと思う。彼も、そして自分も。
緩く塞いだ唇は、思ったとおり血の味がした。
二人分の血が混ざり合って、どくりと鼓動が跳ねる。
リラは薄く嗤った。
相手は笑ったようだった。