小さな小さな声。
それは子供の頃から聞こえていた。
くすくす楽しげな笑い声。
心から嬉しそうな喜びの声。
悲しげな呼び声。
泣き叫ぶ悲鳴。
そんな声が、ごく日常的に聞こえていた。
その声がほかの誰にも聞こえないと知ったのはいつだっただろう。聞こえることは普通ではないと知ったのはいつだっただろう。
口を噤み。
目を閉じ。
耳を塞いだ。
それをしなくていいのだと教えてくれたのは師だ。それは稀代の鍛冶師になれる才能だと褒めてくれたのは師だ。
口を開き、目を開け、耳を澄ました。
飛び込んでくるのは鉱石の煌き、刃の輝き。そしてそこから聞こえるたくさんの小さな声。
あぁ、なんてなんて美しいのだろう。
そう思った日から、閉じた世界は再び開かれた。