ふむ…。では細々とだが日記でも付けるとしようか。
それがこの世界──村の理らしいからね。摂理に背くは罪だ。
まずは僕がどんな者たるかを記しておこう。
名はクレールス。
齢は…幾つに見えるだろうか、太陽も月ももうかなりの数巡った筈だよ。
……あまり勿体付けると僕の女神に怒られてしまうね。27だ。
女神?
ふふっ、先程も表で云ったろう?
穢れし僕を冷たく見下ろす、穢れ知らぬ月の女神。
村人であれ、狼であれ、僕は穢れている。それだけは、変わらないんだ。
ああー、どうなるのだろうね。
鼓動が早まるばかりだよ。
Naka-No-Hito?
ふふ、その禁呪には、今は触れないでおこうか。
どちらにせよ、この話の幕が下りる時、封印は解かれる。そうだろう?