「アセロ、あなたは狼ですか?」
異国出身のハイプリーストが、ふと問いかける。表情はいつもと変わらぬ、動くことのない微笑みだ。ごく何気ない「好き嫌いはありますか」とでもいうかのような口調。問われた魔術師は目を見張った。
「な、そんなわけがないだろう!」
「そうですか」
否定への返事もまた、あっさりとしたものだった。興味をなくしたかのように目をそらし、そのまままた腕の中に魔術師を抱き寄せる。すでに彼の脳裏にあるのは別の事だろう。「カーサの確殺回数は…」などと小さく呟くその男の思考は、魔術師にはわからない。
「もしも、狼だと言ったらどうするつもりだった」
そう答えた途端、上げ足を取るように吊られるのではないか、そんな考えも脳裏をよぎる。しかし、答えは短かった。
「ならば、私を召し上がっていただこうと思いまして」