SKYEYE - AWACS, SEP 19 2004


 青い髪と笑顔が、よく似ている。
 私はその笑顔に惚れたのだった。はにかみ笑いをするあの表情が、愛しくて、愛しくて。
 花束を差し出して、「私の妻になってくれないか」なんて。言ったものだ。
 幸せだった時の記憶と想いが翻って、―――今では私を苦しめる。


「なあメビウス1、なんであんたは戦闘機乗りに?」
「うん?」
 ハンガーで声を掛けられた男が、振り返って聞き返した。青い髪をした、戦闘機乗りにしては優しげな風貌の青年だ。
「出撃前にどうしたんだ?」
「さっき緊張解しがてら雑談してた時に、皆の間で話題になったのさ。あいつは自分の話を全くしねえ、ってな」
 髪をラグビー選手のように刈り込んだ男が、そう言った。
「ああ…、なんだと思う?」
 腕の中の黒猫を降ろそうと苦戦しながら、逆にメビウス1は問い返した。黒猫は降りたくないと、駄々を捏ねるように降りようとしない。
「そうだな…、あんたは結構現実的って感じだけど、誰かに憧れてとかか?」
「君は?」
「俺は父親が国の空軍だったからな」
「俺も同じだよ」
 青い髪の青年は猫を引きはがし、傍の整備兵に預ける。「ええ?」と質問した男が声をあげた。
「本当かよ」
「本当さ。それより、そろそろ時間だ」


 戦争の中ではよくある話だ。
 妊婦だった彼女は、サンサルバシオンに居た。サンサルバシオンは彼女の生まれ故郷であり、また彼女の母が暮らしていた場所である。
 里帰りは間が悪かったとしか、言いようがない。エルジア軍の空爆により、彼女はその母と腹の子もろとも、家屋の下敷きとなって死んだのである。
 儚げな印象、少女めいた面影。軍医を彼女が選んだ理由は、空軍のパイロットに就いた兄と父に影響を受けたのだと言う。
 彼女を失った悲しみを、どこにやればいいのかも分からないまま、ISAFがを結成され、ストーンヘンジに己の無力さをつきつけられる結果になる。彼女の故郷から接収された兵器による、敗退の連続。無慈悲な現実。
 その中で、彼女の兄―――メビウス1が生きていたことは、少なからず私の心を支えた。義兄との仲は良好だったが、やはり彼女の死は義兄にも色濃い悲しみを映した影を落としており、ただ言葉少なに悼みあった。
 誤算は、それだけでは済まなかったということだ。
 彼女を失った後に見た義兄の顔は、彼女によく似ていた。似すぎていたのだ。
 大陸はこんな情勢だというのに。私は、彼を―――。


<<こちら管制機スカイアイ、聞こえるか?>>
<<ああ>>
 彼の声が聞こえる。顔を見なければ、彼を彼としか見なくて済む。
<<貴機はこちらの管制下に入った。まもなく爆撃機が見える、全機撃墜せよ。…今日は俺の誕生日だ。勝利をプレゼントしてくれ>>
<<高くつくよ>>
 そっと、囁くように彼が言った。








高すぎる対価
Life is...